2010年2月20日土曜日

スコッチ

スコッチを飲むなら、女の来ない店がいい。

自分を見詰める孤独な男に、女は邪魔だ。

世間話や身の上話も要らない。

バーテンは黙ってグラスを磨き、スローなピアノが流れる

そんなカウンターで、焼けるような酒を、黙って口に放り込む。

目配りの効いたバーテンは、グラスを指さすだけで同じものを注いでくれる。

また、黙って放り込む。

そうやって、ハードボイルドな夜は更けるのだ。



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by yuko_ppp2501





肉うどん

うどんを食べるなら、四国は高松の駅がいい。

乗り継ぎの時刻を気にしながら早足で店に向かい、肉うどんを頼む。

待つ間も無く、湯気を立ててやって来る。

透き通ったツユに白いうどん、甘辛煮の牛肉、たっぷりの青ネギ。

元から体の一部だったように、するすると入っていく。

最後のツユを飲み干して、乗り継ぎの列車に急げ。


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by shckor


サザエ

サザエを食うなら、徳島の南がいい。

夏の日差しが照りつける頃、入江に浮かんだ筏の店に行く。

目の前の海に沈めた活サザエがメニューだ。

潮水を吸っているから出汁なんかいらない。

醤油を軽く注いで、壺焼きだ。

磯の香りと独特の味わいに、手が止まらない。

たった一つのサザエを、チマチマ食うのとはわけが違う

海風に吹かれながら、思うさまサザエを食う快楽だ。






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by unite




2010年2月19日金曜日

そば焼き

そば焼きを食べるなら、厚い鉄板と手際の良いおばちゃんの店がいい。

使い込まれた鉄板が、四六時中熱く焼かれている。

豚バラにキャベツを手早く炒めたら、塩コショウ。

そこへ、ほぐした麺と水を吸わせたモヤシをたっぷり乗せる。

音を立てて上がる蒸気と一緒に、全体を何度か混ぜ合われば、もう火が通る。

仕上げにソースをかけて、大きく混ぜ合わせれば出来上がり。

たった一分足らず、二つのコテを器用に使って一気に仕上げる。

鉄板の上でソースがジュウジュウいってるのが堪らない。



*私の田舎では、焼きそばのことを、そば焼きと呼ぶ

餃子

餃子を食べるなら、休日の遅い昼時がいい。

ふらりとサンダル履きで寄って、注文を済ませたら新聞なんぞ読んで待つ

けれど注意を怠ってはいけない。

餃子が出来上がるタイミングを逃さず、ビールを頼むのだ。

こいつが重要だ。

酢と醤油、ラー油で作るオリジナルブレンド。

カリカリに焼けたやつをくぐらせて、齧り付く。

肉汁と白菜の甘み、ニンニクの香りを堪能したら、ビールを一気に流し込む

こいつが重要だ。

2010年2月18日木曜日

寿司

寿司を食うなら、飲み屋になってない店がいい。

客が、ちゃんと寿司を食ってる店だ。

だからって、気詰まりするようなのはゴメン。

威勢の良いオヤジと、気さくな奥さんが迎えてくれる店がいい。

旨いものを出す時には、嬉しそうな顔をするオヤジの店がいい。

コロッケ

コロッケを食うなら、通りがかりの肉屋がいい。

熱々のところにソースをかけてもらい、歩きながら頬張る。

急ぐことは無い、ただブラブラと歩けばいい。

それが見知らぬ町でも、なんだか懐かしく感じる。

食べ終わる頃には小腹も気持ちも、少しだけ温かくなるだろう。