by Rafael_Pieroni
あんた、中国人? ふ~ん、日本人…。
あたしゃ、この先で、ちっちゃな店やってんの。
メキシコ人じゃないよ、一緒にしないでよっ!
もっと南っ、まぁ、言っても知らないだろうけどね。
お金持ちの国の人には判らないよ。
な~にんも無い国で、みんな地べた這うように生きてた。
このまま一生終わるのかなって…。
そしたら伯父さんの誘いで、この国に来ることになったのよ。
パパと弟と私。ママはとっくに死んじゃってたしね。
でも、それからが大変よ、歩いて歩いて、もう歩き通し。
メキシコとの国境は、お金を払って川を渡ったわ。
でも、そこでパパの持ってたお金はすっからかん。
他のみんなと一緒に列車の屋根に乗って、それでメキシコを縦断。
長かった…、何日も屋根の上で揺られてるの。
うっかり眠って落ちたら、それっきり。
陽射しは照りつけるし、なによりトイレが困ってさぁ。
まぁ、そんなのは笑い話だけど、ハゲタカどもの事は一生忘れない。
いや、人間だよ、私らみたいなのを襲うギャングだよ。
最低最悪の連中、貧乏人から何もかも毟り取るんだから。
その途中で、パパは死んじゃったし、弟は行方不明。
なんとか私だけアメリカに辿り着いて、今じゃ市民権まであるけどね。
レーガンの時のアムネスティでね。
それでまぁ、店も持てたし、運が良かったんだろうね。
ありゃ、変なこと喋っちゃったね。
あたしゃ、もう行かなきゃ、んじゃ、坊や、元気でね。
えっ、三十? アジア人は若く見えるって本当だねぇ。
とにかく、アメリカを楽しんでよ、アディオース!
*小さな物語は、写真から想起したフィクションです。
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